見えにくいクリック365のいいところ
POSデータでは過去の消費者行動は把握できても、将来の消費者行動まで予測することは不可能だからだ。
だからこそPOSデータを参考に、これから起こりうる天候の異変や地域イベントなどの条件を加味し、発注業務を自立的に行うことにシステム構築の主眼が置かれている。
情報システムはSの根幹の一つと位置づけられるが、世界最大規模のデータ量を誇るコンピューターは自社所有ではなく、N総合研究所のコンピューターセンターなどを利用している。
「ヒト、モノ、カネ」のなかった創業時代から、外部の資源をなるべく活用して業務をしていこうという発想がSには強かった。
それは、コンピューターを所有したところで、使いこなさなければなんら価値を生まないことをS自身がいち早く感じ取っていたからだ。
世の中の変化に合わせて最適な設備やシステムを無駄なく効率的に構築するには、自己所有の固定的な資本・経営資源ではなく、外部のすぐれた最適な資源を活用するのがいいという判断があった。
まだ、アウトソーシングという気の利いた言葉がなかった時代から、Sでは他力活用が始まっていたのである。
しかし、それは単に外部に頼るということとは次元が異なる。
Sは自らの問題意識を明確に持ち、解決の手段を徹底的に考えて、解決のために必要なら外部の経営資源を活用し、効率的な仕組みを作り上げていく。
外部からの提案を鵜呑みにして行動を起こすことは断じてない。
自らが消費者に一番近い存在であると自負し、消費者の立場にたった商品開発と、店舗運営のために情報システムを活用するのである。
すべての基本は売り場、消費者をまず考えるということがシステム開発の原点になっている。
扉のないアイスクリームの陳列ケースに、扉のない飲料の陳列ケース。
消費者に商品を買ってもらうのに障害があるのならば、扉だって取っ払ってしまう。
それがSだ。
「S」を訪れる客は1日に約1千人。
その多くが冷えたお茶やビール、清涼飲料水を購入する。
当然、飲料売り場の前にはお客さんが集まるが、扉があることで非効率なことが起きていた。
1人が扉を開けて商品を取り出し、扉を閉める。
次の客も扉を開けて商品を取り出し、扉を閉める。
大人の身長ほどもある大きさの飲料売り場の扉の前に、1人が立ってしまうと、それ以外の客は商品を手に取ることができず、順番待ちをしなければならなかった。
「扉がなければ、一度に数人のお客さんが商品を手にできるはずではないのか」Sは店舗設備などを担当する幹部たちにこんな言葉を発した。
93年の夏頃だった。
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